ホームマーケットなるほど!ザ・ファンド【Vol.199】「賃金と物価の好循環」ってなんですか?

【Vol.199】「賃金と物価の好循環」ってなんですか?

2024年3月28日

賃金と物価がどちらかだけではなく、ともに上昇することです。賃金と物価の上昇が相互に影響しあうことで、経済の活性化が期待されます。

物価は、経済活動が活発になると上がりやすく、低迷すると下がりやすいため、「経済の体温計」とも言われます。最近では、コロナ禍からの経済再開に伴う需要の増加や、ウクライナ情勢の緊迫化によるエネルギー価格の上昇等をきっかけとして、世界的に物価が上昇してきました。日本でも、平成バブルの崩壊以降、長らくデフレとなっていましたが、2022年夏頃から物価が上昇してきました。

◆日本銀行(日銀)は、2%の「物価安定の目標」として、消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の前年比上昇率+2%の安定的な達成を目指しています。直近2024年2月の消費者物価指数は同+2.8%とピークからは減速しているものの2022年4月以降おおむね2%を超える状況が続いています。日銀の最新3月の見通しでは、消費者物価は来年度にかけて、これまでの輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するなか、政府による経済対策の反動もあって、2%を上回る水準で推移すると予想されています。

◆一方賃金は、上昇してきているものの、物価の上昇には追いついていません。最新2024年1月の現金給与総額は前年同月比+2.0%と、2021年1月以降上昇傾向にあります。ただし、実質賃金(現金給与総額指数÷消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合))は2022年4月以降マイナスが続いています。そこで注目されるのが、「春闘」です。「春闘」は、労働組合が賃金水準の引上げなど労働条件や待遇の改善を企業側に求める労働運動のことで、例年3月中旬に企業側の集中回答日を迎えます。2024年の「春闘」(第2回回答集計)では賃上げ率が5.25%と33年ぶりの高水準となりました。今後も「継続的に賃金が上がること」が見込まれることで、安定した需要が創出され、その結果物価も上昇するという「賃金と物価の好循環」となり、経済が活性化されることが期待されます。

◆こうした賃上げ動向などもあり、日銀は3月の金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、マイナス金利政策の解除とイールドカーブ・コントロールの撤廃等を決定しました。今後も「賃金と物価の好循環」が続いていくのか、注目されます。

関連マーケットレポート